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座談会

司会 フォントの世界は急速に進化していると思いますが、最近、何か動きがありますか。
森澤 皆さん、ご存じかどうか、平成20年に教科書バリアフリー法というのが成立しました。これは、障害を持つ誰もが教科書を読めるようにしましょうというもの。視覚障害を持つ人の場合、障害のレベルによって読める文字の大きさが異なります。従来はボランティアの人が手書きの教科書を作っていたらしいのですが、それを教科書の出版社が負わなければならないのです。これに適しているのが、電子書籍が楽しめるiPadなどで、文字の拡大も自由にでき、これを活用することでより多くの人の学習をサポートすることになります。非常にいいことだと思うし、多くの人が恩恵を受けますが、一方で、OSが異なるとファイルが開かないなど互換性の問題が出てきます。ビジネスの観点から言えば仕方ないのかもしれませんが、“人にやさしい社会”の実現という面からは、その壁を取り除かなければなりません。それに比べて紙という媒体は、いつでも、どこでも、誰でも手にとって見ることができるし、同じ情報を共有することができ、大変優れています。
吉田 お客様がどういった対象に、どんな情報を伝えようとされているのか、どんなところに役立てようとしているのか、それを察知してお手伝いしていくのが、今後の当社の仕事だと思っています。そういう面から言うと、今のお話のような、デジタルのメリット、紙のメリットを自分たちで見極めながら提案していくことが必要になります。ソリューション型の営業が求められているわけですが、まだまだ勉強不足を痛感しています。それに投資も必要です。今、情報が波のように押し寄せてきている感があり、なかなか泳ぎきれないというジレンマもあります。

司会 時代の変化に対応しながら、ビジネスを拡大していくにはどのような取り組みが必要だと思われますか。
森澤 実は最近、感動したことが二つあります。一つは昨年12月に京都にオープンしたカプセルホテル「9h(ナインアワーズ)」。これまでのカプセルホテルは、「寝るだけだから」とか「安いから」の理由で宿泊することが多かったと思います。どちらかというとネガティブなイメージ。でもここは全く違う。空間、照明、サイン、アメニティグッズが、それぞれ超一流のデザイナーの手によってデザインされ、魅力的な空間になっています。一目見て「泊まりたい!」と思いました。通常のカプセルよりも1,000円ぐらい高いのですが、毎日、若い人たちで賑わっているそうです。
もう一つは、クリアファイル。ある専門学校とコラボレーションして、学生さんに当社のノベルティグッズを提案してもらいました。500点ぐらい出された中に、カラーのクリアファイルがありました。表面にモリサワフォントで「重要」「締め切り間近」「資料」などの文字が大きくデザインされている。これがとても人気なんです。クリアファイルは昔からありますが、ちょっとしたアイデアで人気グッズになる。これら二つの体験から、「アイデアとデザインと人のネットワーク」は無限であり、今後のビジネスを考える上で重要なキーワードになると再認識しました。
田中 これまでの印刷業は装置産業の側面が強く、新しい機械を導入すれば一定の成果を上げてきました。しかし、パソコンやデジタル印刷の普及によって印刷が身近になり、方向転換しなければ経営的にも立ちいかなくなっています。森澤さんがおっしゃるように、我々も「アイデア、デザイン、ネットワーク」を大切にしていきたいと思います。とくに、女子高生向けのファンシーグッズなどは、その最たるものかなと。文具で言えば、コクヨさんの「東大生ノート」もアイデアの勝利ですね。ノートの罫線にドットを入れただけで、ヒット商品になっています。
司会 かつての欠乏充足の時代はクリアファイルもノートも用途に沿った機能を備えていればよかったのですが、現代のような欲望充足の時代には、機能プラス付加価値がなければ売れません。とくに文具は、その点が大きく変化してきましたね。杉山さん、紙はいかがですか。
杉山 紙の世界でも、付加価値のある個性的な加工品の開発が盛んに行われています。それがビジネスになるためには、その商品が、個性的でありながらトレンドを形成していく力を持つことが必要だと思います。今、ちょっと気になっているのが、心斎橋にあるペーパーアイテム・ショップ「ウィングド・ウィール」です。ここは、結婚式の招待状などブライダル用のペーパーアイテムを中心に、オリジナルの封筒、カード、便箋などを扱っています。webにも出されていて、確実にファンを増やしています。我々が見ると一点一点が高価なのですが、若い女性たちにとってはそれだけの価値があり、よく売れているようです。
吉田 皆さんのお話を聞いていて、やはり使う人、買う人のことを、きちんとイメージできないとビジネスに結び付かないということを改めて認識しました。当社ではそれをトレーニングするため、宅配寿司店をやっています。その地域に溶け込み、そこに暮らす人たちの生活を具体的に知ることで、的確な提案ができます。それは我々の本業でも同じことです。これまでの印刷業は受注生産ですから、お客様の仕事を知らなくても仕事ができました。しかし、それでは価格競争によって会社が疲弊することが目に見えています。森澤さんがおっしゃった「アイデアとデザインと人のネットワーク」に注力していきたいですね。

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